設備が変われば、調教技術も劇的な進化を遂げる。美浦を牽引するトップステーブルは、このモンスター坂路をどう乗りこなしているのか。木村哲也厩舎の試みは極めて戦略的だ。新坂路で極限までフィジカルに負荷をかける一方、ウッドチップコースでは折り合いとフォームの精密な微調整に徹する。かつて世界を震撼させた名馬イクイノックスの育成メソッドをさらに昇華させ、負荷とリラクゼーションを完全に分離させた独自の「2段ロジック」を確立した。坂路で追い込みすぎず、しかし芯の強さを極限まで引き出す緻密なラップ管理がそこにある。
対照的に、百戦錬磨のベテラン国枝栄調教師が見せるアプローチは、経験と新鋭技術のハイブリッドだ。長年培った馬を見る眼を基盤にしながら、新坂路の登坂時にかかる心拍数と乳酸値の相関関係を独自にデータ化。国枝厩舎の調教助手が漏らした言葉が印象深い。「以前は栗東へ遠征するたび、馬体の張りやトモの厚みで一歩見劣りする悔しさがあった。だが今は違う。美浦にいながらにして、栗東以上の負荷を安全にかけられる」。美浦トレーニング・センターの馬房の奥深くで、クラシックを制するための極秘メニューが着々と実を結んでいる。