空前のブームの陰で、水面下の攻防は凄まじさを極めていた。表現の拡大を推し進める出版業界に対し、社会秩序の維持を掲げる警視庁は強い警戒感を露わにし、摘発のカードを口の端に上らせていたからだ。わいせつ性の判断基準を巡り、捜査当局とメディア側の緊張関係は限界に達していた。
この決定的な亀裂を回避し、自主規制の枠組みを構築する役割を担ったのが出版倫理協議会である。修正処理の基準や販売形態、帯の文句に至るまで、細部にわたるルール作りが急ピッチで進められた。法的処罰のリスクと表現の自由の狭間で繰り広げられた駆け引きは、日本のポピュラーカルチャーにおける検閲と表現の境界線を決定づける歴史的葛藤であった。