インターネット上やSNSで見られる七夕伝説の言説には、いくつかの誤解が定着しています。客観的事実に基づき、それらの盲点を是正します。
誤解1:「雨が降ったら織姫と彦星は絶対に会えない」
前述の通り、中国の原典や東アジア全域の民俗学において、雨は二人の逢瀬を阻む障壁ではありません。雨によって増水した天の川を渡るためにカササギが橋を架けるのであり、カササギの登場によって奇跡が完成します。現代の短冊に「七夕が晴れますように」と書く風習は、日本固有の情緒が生み出したローカルな受容形態です。
誤解2:「カササギは日本中どこにでもいる普通のカラス」
「カササギ=黒い鳥=全国のカラス」と混同されがちですが、生物学上、カササギ(Pica pica)は特定地域に偏在しています。豊臣秀吉の朝鮮出兵時に持ち帰られた個体が佐賀平野一帯に定着したとされ、国の天然記念物「カササギ生息地」に指定されている佐賀県・福岡県など一部地域を除き、古来の日本では極めて珍しい鳥でした。そのため古典文学では専ら「概念上の鳥」として受容されていました。