多くの読者が最も強い疑問を抱いているのが、「これだけの事故を起こした医師が、なぜ現在も医師として活動できているのか」という点です。
松井医師は赤穂市民病院を退職後、関西圏の別の医療機関や救急クリニック、透析施設などに勤務先を移転していたことが報じられています。新たな勤務先が特定されるたびにネット上では批判や注意喚起の声が上がりました。
現行の日本の法制度において、厚生労働省の医道審議会が「医師免許の取り消し」や「医業停止」といった行政処分を下す基準は極めて厳格です。処分が検討されるのは主に以下のようなケースに限られます。
・刑事裁判で禁錮以上の有罪判決が確定した場合
・麻薬取締法違反、強制わいせつ、贈収賄など明確な反社会犯罪を犯した場合
・著しく医師としての品位を損なう行為があった場合
極めて残念なことに、「手術手技が未熟であること」や「過失による医療事故」単体では、直ちに行政処分による免許剥奪に至らないのが現行制度の実態です。その結果、ある病院で問題を起こした医師が、情報の共有されないまま別の病院で再び医療行為を行うという「医療界の移動ループ」が生じる構造的欠陥が浮き彫りとなっています。