時計の針を巻き戻すと、多くのファンにとって最大の謎であり衝撃だったのが、2015年10月29日に突如発表されたモーニング娘。からの卒業でした。当時わずか17歳。グループの絶対的支柱として周囲からの期待を一身に背負っていた時期の電撃引退劇は、さまざまな憶測を呼びました。
後年のインタビューや手記において、本人の口から語られた卒業の真実――それは「心身の消耗」と「自己評価の崩壊」でした。アクターズスクール広島出身として幼少期から卓越したダンススキルを誇っていた彼女は、グループ内でも常に完璧を求め続け、自他共に認める厳しいハードルを自らに課していました。しかし、センターとしての重圧、変声期による歌唱への違和感、そして過密日程のなかで「自分が思い描く理想のパフォーマンスができない」という強烈な焦燥感に苛まれていたのです。
当時の状況について、鞘師自身も「このままでは自分が壊れてしまう、一度立ち止まってゼロから自分を見つめ直したい」と振り返っています。周囲からは引き止められたものの、自分の足で人生を歩み直すために選んだのが、芸能活動を全面休止してのニューヨーク留学でした。異国の地で現地のダンサーたちに混ざり、誰からも特別扱いされない環境に身を置いたことで、英語力の習得だけでなく「人間・鞘師里保」としての自己肯定感を徐々に回復させていきました。