ネット上の考察やコミュニティにおいて、かつて「猗窩座は女性に優しいジェントルマンだから女を喰わないのか」という好意的な誤解が散見されました。しかし、公式ファンブック等の設定や原作者・吾峠呼世晴氏の描写を精査すると、真相はより痛切なものであることが分かります。
猗窩座が女性を喰わなかったのは、理知的な「配慮」や「紳士協定」によるものではありません。記憶を完全に失っていたにもかかわらず、彼の肉体と無意識の底には「自分を信じてくれた恋雪」と「父の看病をした日々の記憶」が原体験として染み付いていました。女性を傷つけること、喰らうことに対して、本能の次元で猛烈な拒絶反応が働いていたのです。
鬼にとって人間を喰らうこと、特に栄養価の高い女性を喰らうことは力を増す最短の手段です。上弦の弐である童磨が猗窩座を挑発する際、女性を食べないことを引き合いに出していたことからも、これが鬼社会において極めて異例かつ不利な制約であったことが窺えます。鬼舞辻無惨がこの身勝手な偏食を例外的に許容していたのは、女性を喰らわずとも他の鬼を凌駕する絶対的な強さを猗窩座が証明し続けていたからに他なりません。