インターネット上のレビューやSNS等で散見される誤解のひとつに、「商業的なガールズバンドブームに乗ったアイドル映画」という見方があります。しかし、本作の実態はそのような軽薄な企画とは対極に位置する、徹底したインディペンデント精神に貫かれた作品です。
ロケ地となったのは、群馬県前橋市および高崎市。メインの舞台となった芝崎高校は、群馬県立高崎商業高等学校などで撮影が行われました。地方都市特有の曇り空、どこまでも続く平坦な道路、古びた商店街、カラオケボックスなど、作為的な美化を一切排除したロケーションが、観る者に「かつて自分たちが過ごした高校時代」の記憶を強烈に呼び覚まします。現在でもロケ地探訪(聖地巡礼)に訪れるファンが絶えない理由は、映画の中に映し出された風景が20年を経ても色褪せない普遍性を持っているからです。
また、本作は『スウィングガールズ』(2004年)のような大衆的サクセスストーリーや、後のアニメ『けいおん!』のようなポップカルチャー的デフォルメとも大きく一線を画しています。物語の中で奇跡的なコンテスト優勝やプロデビューといった大仰な成功は一切描かれません。ただ「文化祭のステージで曲を演奏し切る」という、大人から見れば取るに足らない、しかし当事者の高校生にとっては世界のすべてである瞬間の尊さが、極限までピュアに切り取られているのです。