焼き鳥専門店を訪れても、品切れの札が掲げられていたり、1人1本限定の制限が設けられていたりすることが珍しくありません。なぜそこまで手に入らないのか、その理由は極めて単純明快な物理的数値にあります。
一般的なブロイラー(生後50〜60日程度、生体重量約2.5〜3.0kg)から採取できる大動脈部分の重量は、1羽あたりわずか約5g〜8g程度に過ぎません。さらに、後述する丁寧なトリミング(余分な硬い筋や酸化した脂、凝固した血餅の除去)を施すと、可食部として残る重量は1羽から3〜5g前後にまで目減りします。標準的な焼き鳥の1串(約25g〜35g)を美しく仕立てるためには、実に鶏4羽から6羽分もの心臓根元を集約する必要があるのです。
食肉流通の業界構造を見ても、焼き鳥こころのこり希少な理由は際立っています。大規模な食鶏処理ラインでは、内臓部分はハツやレバーとして大まかに選別・冷凍出荷されるケースが多く、手間のかかる大動脈の個別分離作業は敬遠されがちです。丸鶏(中抜き)を毎日店内で捌いているこだわりの焼き鳥店であっても、1日に仕入れる鶏の数が10羽であれば、作れるこころのこりの串はわずか2本〜3本。開店直後に即完売してしまうのは必然の物理的限界と言えます。
また、健康志向の観点から気になる鶏ハツモトカロリーと栄養について検証すると、100gあたりのエネルギーは約200〜240kcal。純粋な心筋であるハツ(約140kcal)と比較すると、まとわりつく内臓脂肪の分だけ脂質は高めです。しかしその反面、ヘム鉄やビタミンA、代謝を助けるビタミンB12、さらに疲労回復に寄与するタウリンや血管壁を構成するコラーゲンが豊富に含まれており、適量を嗜む分には滋養強壮に優れた栄養価を誇ります。