整理整頓の不得手さが個人の許容範囲を超え、日常生活や健康に重大な支障をきたしている場合、精神医学的な観点からのアプローチが不可欠です。アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)および世界保健機関の『ICD-11』において独立した精神疾患として定義されているのが「ためこみ症(ホーディング障害)」です。ためこみ症の診断基準では、物品の実際の価値に関わらず手放すことに対して持続的な困難を感じ、その結果として居住空間が本来の目的で使用できなくなっている状態が重視されます。
一方で、近年注目度を増しているのが発達障害と片付けられない関係です。特にADHD片付けられない理由を神経心理学的に分析すると、脳の前頭前野が担う「実行機能」の脆弱性が根本にあります。ADHD特性を持つ人は、目の前にある複数の刺激から優先順位をつけるワーキングメモリの容量が逼迫しやすく、「要・不要を瞬時に判断する」「分類して定位置に戻す」という一連のマルチタスクが脳内でショートしてしまうのです。
散らかった部屋の様相が似通っていたとしても、その根本原因が「注意の散漫」なのか、「手放すことへの病的な苦痛」なのか、あるいは「認知機能の減退」なのかによって、打つべき対策は180度異なります。本人を責める前に、どの要因が優位に働いているかを見極める作業がファーストステップとなります。