多くの人が「スヌーピーはビーグルに見えない」と違和感を抱く最大の原因は、そのカラーリングと耳の形状にあります。
一般的に広く認知されているビーグル犬は、ブラック、タン(茶色)、ホワイトの3色が混ざり合った「トライカラー」です。頭部や背部にはっきりとした茶褐色が入るのが標準的であり、スヌーピーのように「純白のボディに黒い耳、背中に1つの黒い斑点」という配色は、現実の純血ビーグル犬のスタンダード(毛色基準)からは大きくかけ離れています。
この疑問を解き明かす鍵は、原作者チャールズ・M・シュルツ自身の幼少期の記憶にありました。シュルツが13歳の頃、ミネソタ州セントポールの自宅で飼っていた愛犬の名前はスパイク(Spike)といいました。シュルツは自著や回想録の中で、この愛犬について次のように明言しています。
「スパイクは利口で、人間の言葉を50語以上理解し、ピンや剃刀の刃まで飲み込んでしまうような途方もない犬だった。ただし、彼は純血のビーグルではなく、ポインター系の血が混ざった雑種(ミックス犬)だった」
シュルツ少年が深く愛したこの雑種犬こそが、スヌーピーの原型(プロトタイプ)です。スパイクの白地に黒いぶち模様という外見的特徴が、そのままキャラクター造形に引き継がれました。
さらに、1950年代の全米新聞連載(コミック・ストリップ)の物理的制約も見逃せません。当時の新聞印刷は網点が荒く、小さなコマの中で複雑なトライカラーを印刷するとインクが滲み、キャラクターの表情や輪郭が潰れてしまう技術的限界がありました。シュルツは、インク代の節約と紙面での圧倒的な視認性を確保するため、不要な陰影や色彩を削ぎ落とし、究極にミニマルな「白と黒の記号」へと昇華させたのです。