インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「核融合反応自体はヘリウムを生むだけなので、水素爆弾は放射能汚染を出さないクリーンな爆弾ではないか」という誤った言説が見られます。しかしこれは、物理構造の現実を完全に無視した危険な誤解です。
第一に、前述のとおり水爆の核融合を点火するためには原爆(核分裂)を炸裂させる必要があるため、その時点でウランやプルトニウムの核分裂生成物(セシウム137やストロンチウム90など)が必ず発生します。
第二に、実戦配備されている多くの水素爆弾は、核融合だけで破壊力を完結させていません。それらは「3F爆弾(Fission-Fusion-Fission:核分裂・核融合・核分裂爆弾)」と呼ばれる構造を採用しています。重水素・三重水素の融合反応によって生じる超高速の「14.1メガ電子ボルトの中性子」を利用し、水爆の外郭(タンパー)に配置された安価な天然ウラン(ウラン238)に強制的に核分裂を起こさせる仕組みです。
ウラン238は通常の中性子では分裂しませんが、核融合が生む凄まじいエネルギーの中性子を受けると連鎖分裂を引き起こします。結果として、水爆の総エネルギーのうち50%以上、場合によっては80%近くが最後のウラン分裂から生じることになります。つまり、原爆単体よりも桁違いに大量の放射性降下物(フォールアウト)を撒き散らすため、水爆実験による放射能汚染は「極めてダーティで長期間にわたり生態系を破壊する」のが科学的真実です。