甲子園球場を語る上で欠かせない存在が、グラウンド整備のスペシャリスト集団である阪神園芸だ。彼らの手腕は国内にとどまらず、海外メディアからも「神業(Kamiwaza)」と称賛されている。
雨が降り始めると、彼らは即座に土の水分の含み具合を極小の狂いもなく見極める。鹿児島産や熊本産の赤土に鳥取産の黒土を独自の配合でブレンドした甲子園の土は、水はけが良い反面、一度大量の水分を含んで重くなるとコンディショニングが極めて難しい。整備スタッフは、吸水スポンジや吸水ローラーを駆使し、水たまりを一滴残らず除去していく。さらに、砂の撒き方ひとつで内野バウンドの跳ね方を一定に保つという熟練の技術を披露する。
「どんなに激しい豪雨が降っても、雨が上がれば30分後にはプレイボールがかかる」。この語り継がれる伝説は、単なる精神論ではなく、長年蓄積された気象データの分析と職人たちの緻密な連携プレーによって支えられているのだ。