かつてのMac OS X環境では、「トラックパッド」の標準設定パネル内に分かりやすく配置されていた3本指ドラッグですが、OS X El Capitan以降、現在のmacOSに至るまで標準のトラックパッド項目からは姿を消しています。この変更に対して、ネット上では「機能自体が削除された」という誤解が長年広がり続けてきました。
AppleのUI/UX設計チームがこの機能をアクセシビリティ階層へ移管した背景には、明確なハードウェアとソフトウェアの統合戦略が存在します。
第一の理由は、Force Touch(感圧タッチトラックパッド)の標準化です。Appleはトラックパッドの物理スイッチを廃止し、Taptic Engineによる擬似的なクリックフィードバックへと全面移行しました。これにより、画面上のオブジェクトを「グッと押し込んでドラッグする」操作がOSの標準プロトコルとして定義され、3本指ドラッグは標準機能から「身体的補助を必要とするユーザー向けの代替操作(アクセシビリティ)」へと位置付けが変更されたのです。
第二の理由は、マルチタスクジェスチャとの割り当て競合です。デフォルト設定において、3本指スワイプは「Mission Control」の起動や「フルスクリーンアプリケーション間の移動」に割り当てられています。ドラッグ操作に3本指を占有させると、OSが標準で推奨するナビゲーション体験と重複してしまうため、初期状態ではオフにされ、深い設定階層に格納されることになりました。