第一段階である「生成り(なまなり)」は、まさに「鬼になりかけている状態」を指す。額には小さなツノの萌芽が見られ、口元も釣り上がっているが、顔立ちの根底には人間の女性としての美しさと理性が残されている。完全に鬼化していないからこそ、己の内に湧き上がる醜い嫉妬心に対する恥じらいや苦悩が色濃く漂う。
生成りの面が表現するのは、抑えきれない怨念と、それを止めようとする人間性との凄絶な葛藤だ。能の舞台において生成りを着ける役は、まだ言葉を通わせる余地を残しており、救済の可能性すら感じさせる。しかし、その内面で燃え盛る嫉妬の火を消すことができなければ、引き返せない恐怖の領域へと踏み出すことになる。