ふたりの関係性を語る上で外せないのが、辻仁成のベストセラー小説を実写化した映画『サヨナライツカ』だ。バンコクの高級ホテルを舞台に、一生に一度の激しい恋に身を投じる男女を描いたこの作品は、日本映画業界においても異彩を放つ濃密な恋愛映画として語り継がれている。
主演を務めた中山美穂が演じた沓子(とうこ)という役柄は、まさに彼女自身の持つ官能性と切なさを極限まで引き出したハマリ役だった。原作者である夫の視線と、それに全力で応えようとする妻の演技。撮影現場では息をのむような緊張感が漂い、フィクションと現実の感情が溶け合う凄絶な空間が作られていたという。スクリーンに映し出された切ないヒューマンドラマは、ふたりの現実の愛の軌跡そのものでもあった。