神道祭祀の基準を定める神社本庁の『神社祭式同行事作法解説』においても、神職が祭儀を行う際、正中をみだりに横切ったり正中に直立したりすることを戒める規定が存在します。祭儀を司る神職ですら細心の注意を払う領域であるからこそ、一般参拝者に対しても参道の真ん中を歩くタブーが広く共有されてきました。
では、正中を歩いてはいけない理由を日常の人間関係に置き換えて考えてみましょう。目上の人物の自宅を訪問した際、家主の真正面に仁王立ちしたり、主人が座る上座のど真ん中を踏み荒らしたりすることは非礼に当たります。神社参拝もこれと全く同じ文脈です。神域において最も尊い存在である神霊の正面軸を侵さず、自らを謙遜して「脇を歩かせていただく」という謙譲の姿勢が形となったものが、参道の中央を避ける作法なのです。
文化人類学や民俗学の観点からも、参道は「日常(俗)」から「神聖(聖)」へと意識を切り替えるグラデーションの空間と分析されています。中央を意識的に避けて歩く身体動作そのものが、参拝者自身の精神を集中させ、日常の我欲を鎮める「敬意の身体化」として機能しています。