姫路で海鮮丼を語る際、いま最も熱い議論を巻き起こしているのが「郊外・市場隣接の実力店」と「港直結の浜料理店」の二大勢力です。地元客が日常的に通い詰め、週末には県外ナンバーの車で長蛇の列ができる名店には、単なる写真映えを超えた明確な理由が存在します。
その筆頭格として語られるのが、姫路市中央卸売市場の場外エリアや手柄周辺で圧倒的な知名度を誇る「まえちん」です。看板メニューである海鮮重やデカ盛り海鮮丼が運ばれてきた瞬間、誰もが言葉を失います。厚切りにされた本マグロ、脂の乗ったサーモン、旬の白身魚、大ぶりのエビやイクラが何層にも折り重なり、米が見えないどころか器の縁からこぼれ落ちそうな状態で提供されます。この圧巻の盛り付けこそが、連日オープン前から行列を作る決定的な要因です。
一方、播磨灘の潮風を肌で感じながら極上の鮮魚を味わえるのが、姫路港(飾磨区)のフェリーターミナルにほど近い「姫路港 とれとれ食堂」です。坊勢漁業協同組合直営のルートを活かし、水揚げされたばかりの「坊勢サバ」や「生シラス」「まえび」といった地元特有のまえもん(地魚)を惜しげもなく盛り込みます。生簀から引き揚げて直前に捌いたサバのコリコリとした驚愕の歯ごたえは、一般的な海鮮居酒屋の養殖サバとは一線を画す体験をもたらします。
「なぜ、これほどのクオリティがこの価格で維持できるのか」という疑問に対し、地元仲買人は取材に次のように証言しています。
「姫路の魚処は、神戸や大阪の消費地市場へ送る前の最上流で魚を押さえられる。仲買人直営や漁協直送の店なら中間マージンが一切乗らない。観光客向けのプレミアム価格ではなく、市場で働く人間や漁師が日常で食べる基準のまま出しているから、他地域の人から見れば異常なコストパフォーマンスに映るのです」