ポケモン図鑑に登録されている1000種類以上のポケモンのなかでも、イラスト界隈におけるゲンガーの存在感は突出しています。X(旧Twitter)やpixivにおけるタグ検索では、ゲンガーイラストかわいいとゲンガーイラストかっこいいという、相反する2つの形容詞がほぼ同等のボリュームで共存している点が極めて特異です。
キャラクター認知心理学の観点から分析すると、ゲンガーは「親しみやすさの記号」と「脅威の記号」を意図的に衝突させた構造を持っています。卵型のずんぐりした体躯、短い手足、そして大きな赤い目は、哺乳類の幼形進化(ベビースキーマ)を彷彿とさせ、無意識の安心感や庇護欲を誘発します。ところがその口元には、獲物を嘲笑うかのような鋭い裂け口と歯が刻まれ、図鑑説明文には「命を奪いに部屋の隅の影から現れる」という容赦ない生態が記されています。
この強烈なギャップこそが、ゲンガー人気の理由の核心です。単なるマスコットでは出せない「毒気」と、単なるモンスターでは持ち得ない「愛嬌」。光と影のアンビバレンス(両面価値)を内包しているからこそ、絵描きは「ダークで恐ろしい姿」を描きたくなり、同時に「無防備にお菓子をねだるコミカルな姿」も描きたくなるのです。