ボスニア・ヘルツェゴビナの現在地|治安と歴史の真実を徹底解剖

ボスニア・ヘルツェゴビナの現在地|治安と歴史の真実を徹底解剖

ボスニア・ヘルツェゴビナの現在地|治安と歴史の真実を徹底解剖に関する専門家の意見を丁寧に解説いたします。

遠く離れた日本とボスニア・ヘルツェゴビナを結ぶ最大の架け橋となった人物が、名将イビチャ・オシム氏です。旧ユーゴスラビア代表最後の監督を務め、サラエボ包囲戦の最中に「私の故郷サラエボが砲撃されているのに、代表監督を続けることはできない」と涙ながらに辞任会見を開いたエピソードは、民族融和を信じ続けた彼の苦悩を如実に物語っています。

オシム氏は2003年にジェフユナイテッド市原(現・千葉)の監督に就任すると、「考えて走るサッカー」を掲げてチームを強豪へと押し上げ、2006年には日本代表監督に就任。鋭い洞察と人生の機微を突いた哲学的な言葉――通称「オシムの言葉」は、サッカー界のみならず日本のビジネスパーソンや文化人の心にも深く刻まれました。2007年に脳梗塞で倒れ志半ばで退任を余儀なくされたものの、彼が日本サッカーに植え付けた自立と献身の精神は、今なお色褪せることはありません。

そのオシム氏の故国であるボスニア・ヘルツェゴビナサッカー代表もまた、国家の傷を癒やす希望の光となってきました。長年バイエルンやインテルなどで世界最高峰のストライカーとして君臨したエディン・ジェコ選手らスター選手を輩出し、2014年FIFAワールドカップ・ブラジル大会では悲願の初出場を果たしました。政治体制がいまだ民族ごとに分断される中で、代表チームだけはボシュニャク系、セルビア系、クロアチア系の選手たちが同じエンブレムを胸に戦い、国民が一つになれる稀有な瞬間を作り出してきました。オシム氏が晩年まで見守り続けたチームの矜持は、この国の復興の象徴そのものです。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。