豊橋の文化的アイデンティティを語る上で欠かせないのが、数百年もの歴史を刻む「手筒花火」だ。竹筒に黒色火薬をきつく詰め込み、人が両手で抱えながら火を放つこの神事は、観客の度肝を抜く凄絶な熱気に満ちている。
夜空に向かって噴き上がる十数メートルの火柱。そして終幕、猛烈な爆音とともに筒の底が抜ける「ハネ」の瞬間まで、揚げ手は全身に火の粉を浴びながら仁王立ちを貫く。単なる観光客向けの見せ物ではない。地元の若者たちが自ら山に入り、竹を切り、縄を巻き上げる準備工程そのものが、地域コミュニティを繋ぐ血の通った儀式なのだ。近年ではこの手筒花火の伝統技法と精神性を学ぶ文化体験ツアーも組まれ、伝統の継承と観光産業の新たな架け橋となっている。