東映移籍後、鶴田浩二は『人生劇場 飛車角』で凄みと哀愁を兼ね備えた男を演じ、空前の任侠映画ブームを巻き起こす。さらに、自身の大ヒット曲でもある『傷だらけの人生』など、昭和の映画史・歌謡史に残る傑作を次々と世に送り出した。
着物姿で白いマイクを手に、左手を耳に当てて歌う独特のスタイルは、日本中の男たちが憧れるカリスマとなった。任侠映画の看板スターとして過密なスケジュールと背中合わせの毎日を送る中、須美子さんは夫の体調管理を徹底し、喉をいたわる食事や静かな睡眠環境を確保することに尽力した。狂乱のようなスターダムの中心にいながら、鶴田浩二が正気を保ち続けられたのは、須美子さんがつくる揺るぎない家庭という温かな港があったからにほかならない。