ノヴの容貌が劇的に変貌した発端は、東ゴルトー共和国の宮殿へ単独で潜入した任務にあります。彼に課せられた極秘ミッションは、選別の本番当日に突入班が一斉に宮殿内部へ侵入できるよう、自身の念能力で空間の「出入口(マーキング)」を設置して回ることでした。
敵の哨戒網をかいくぐるため、ノヴは全身のオーラを完全に断ち切る高等技術「絶(ぜつ)」を維持したまま行動せざるを得ませんでした。念能力者にとって「絶」とは、鎧をすべて脱ぎ捨てた無防備な裸体同然の状態を意味します。その無防備極まりない精神と肉体で、王直属護衛軍の一角であるシャウアプフの禍々しいオーラの結界にニアミスしてしまったことが、すべての悲劇の引き金となりました。
プフが放っていたオーラは、王(メルエム)への狂信的な忠誠と、侵入者を絶対に許さないという冷酷無比な悪意に満ち満ちていました。生身の魂に直接注ぎ込まれたその異質な重圧に直面した瞬間、ノヴの防衛本能は激しく警告を発します。這いつくばりながらなんとかマーキングの設置をやり遂げたものの、四次元空間へ帰還した直後、彼の精神は完全に限界を超えていました。
極度の恐怖と精神的ショックは、自律神経や内分泌系へ壊滅的なダメージを与えます。潜入直後から急速に白髪化が進行し、討伐作戦の決行日を迎える頃には、過度のストレスによる激しい脱毛によって頭髪の大部分を失う事態へと追い込まれました。誇り高きプロフェッショナルが、底知れぬ怪物の気配に触れただけで心身を蝕まれていく様は、キメラ=アントという種の絶望的な脅威を読者へまざまざと見せつける結果となったのです。