フィットネス現場の指導者やスポーツ整形外科の臨床データによると、ベンチプレスによる手首の痛みは主に2つの病態に大別される。1つは親指側や手首中央がズキズキと痛む「腱鞘炎(ドケルバン病や橈側手根屈筋腱炎)」、もう1つが小指側の関節深部に鋭い痛みが走る「TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)」である。
実際のトレーニング現場やSNS上のコミュニティでは、「痛みを我慢して80kgから100kgへステップアップした途端、ドアノブを回すことすらできなくなった」「タオルを絞る動作で手首の小指側に激痛が走る」といった切実な声が数多く確認できる。特にTFCC損傷ベンチプレス原因として顕著なのが、ボトムポジションで手首が小指側へ過剰に傾く(尺屈する)フォームエラーだ。
TFCCは手首の小指側にある軟骨と靭帯の複合組織であり、手首のクッションとして機能している。しかし、血流が乏しい組織であるため、一度強い断裂や摩耗を起こすと自然治癒に長期間を要する特徴がある。痛みを単なる筋肉痛や一時的な疲労と自己判断し、高重量の負荷をかけ続けることは選手生命を脅かす致命的なミスにつながる。