毛髪研究のフロンティアにおいて、日本は世界のトップランナーの一角を占めている。その象徴とも言えるのが、理化学研究所の辻孝チームリーダーらによって進められてきた「毛髪再生医療プロジェクト」の動向だ。
彼らが挑んでいるのは、幹細胞を操作して毛包そのものを人工的に器官再生させるという、かつてはSFと見なされていた領域である。毛包幹細胞と毛乳頭細胞を組み合わせ、生体外で「再生毛包原基」を培養・移植する技術は、すでに前臨床段階で驚異的な成果を叩き出している。この研究がもたらした最大の副産物は、毛包の発生・休止・再活性化をつかさどる分子メカニズムの完全な解明だ。
髪を伸ばすアクセルを踏む因子と、ブレーキをかける因子の拮抗関係が可視化されたことで、再生医療のみならず、日常的な育毛アプローチの常識までもが劇的な書き換えを迫られている。