ひのとりの爆発的なヒットは、単なる新型車両の成功にとどまらず、日本人の移動に対する価値観の変容を如実に物語っている。かつての高度経済成長期から続いてきた「1分1秒でも早く目的地に着くことこそが正義」というタイパ(タイムパフォーマンス)至上主義から、移動時間を心身のリフレッシュや自己投資に充てる「クオリティ・オブ・タイム」への明確なシフトである。
心理学的な観点から見ても、バックシェルシートが提供する「不可侵のパーソナルスペース」は極めて大きい。現代の日本社会において、他者に対する気遣いや同調圧力は無意識のストレス源となっている。新幹線の座席を倒す際の後席への躊躇や、他人の視線から解放される環境は、心理的安全性そのものを提供する装置として機能しているのだ。2時間を単なる「移動のロス」と捉えるか、「誰にも邪魔されない書斎・休息の空間」と捉えるかで、この列車の価値は180度変わる。
これらを踏まえた、後悔しないための利用判断基準は以下の通りだ。
特急ひのとりを絶対におすすめできる人
- 移動時間を「落ち着いたワークスペース」や「完全な休養」として活用したい人
- 目的地が大阪難波、心斎橋、天王寺、近鉄沿線(奈良・伊勢方面)に近い人
- 座席のリクライニングや周囲の視線に気を使うストレスから完全に解放されたい人
- 新幹線より費用を抑えつつ、最高ランクのプレミアムな移動体験を味わいたい人
新幹線を利用したほうが賢明な人
- 分刻みのスケジュールで移動しており、最優先事項が「移動時間の短縮」である人
- 目的地が新大阪、新大阪以西(山陽新幹線方面)、新大阪以東(京都・東京方面)へ直通する人
- 車内販売を利用して温かい食事やワゴン限定のアイスクリームなどを楽しみたい人