教習現場において「送りハンドル なぜダメ」と繰り返し指摘される背景には、日本の道路環境と安全運転の構造的要請が存在します。
交差点の右左折やクランク、S字といった狭路コースでは、短い距離と時間の中で一定の舵角を素早く形成しなければなりません。送りハンドルは小刻みに手を往復させるため、素早いステアリング操作が要求される場面で操舵遅れ(タイムラグ)を生じさせます。結果として車体の膨らみや脱輪、歩行者や対向車に対する回避遅れに直結するのです。
教習所での技能試験(修了検定・卒業検定)および運転免許センターの一発試験における採点基準では、送りハンドルそのものが独立した減点項目として条文に明記されているわけではありません。警察庁が定める『運転免許技能試験実施基準』に基づき、以下の基準で厳格に減点適用されます。
実技検定では、ステアリングの回し方が不安定な場合、「ハンドル操作不適」として5点減点の対象となります。さらに、操作の遅れによって車体がふらついた場合は「ふらつき(小)」で10点減点、交差点の右左折時に適切なコースを外れれば「進行方向別通行区分違反」や「大回り右折・膨らみ」として追加減点が重なります。100点満点からの減点方式(合格基準は普通免許で70点以上)において、一度の操作遅延が不合格へ直結するリスクを孕んでいます。
なお、公道での送りハンドル自体が直ちに道路交通法違反(切符を切られる行為)になるわけではありません。しかし、万が一操作ミスによって事故を引き起こした場合は、道路交通法第70条(安全運転義務違反)に抵触し、違反点数2点および反則金(普通車9,000円)が科される法的手続きの根拠となり得ます。