事故後、独立した専門機関である運輸安全委員会(JTSB)による科学的調査が行われ、続いて海難審判所において船長および航海士に対する法的責任の審理が進められました。公表された調査報告書と裁決原簿からは、緊迫した船橋(ブリッジ)内の実態が浮き彫りになっています。
調査報告書が指摘した衝突原因の骨子は、以下の3点に集約されます。
- 目視見張りの形骸化:レーダー画面や電子海図プロッターの注視に気を取られ、肉眼による全周見張りが疎かになっていたこと。
- 「相手船が避けるだろう」という予断:海上衝突予防法上、自船が保持船(針路・速力を維持すべき船)であると思い込み、早期の警告信号や積極的な衝突回避操船(避航)を怠ったこと。
- 自動操舵(オートパイロット)の過信:輻輳海域へ進入しているにもかかわらず手動操舵への切り替えが遅れ、舵効きを生かした機敏な回避行動が取れなかったこと。
海難審判においては、業務上の過失として航海当直者の職務上の過失が認定され、海技免状の効力停止や戒告といった処分が言い渡されました。この裁決は、内航業界全体に対して「航海支援機器が高度化しても、最終的な安全の担保は船橋当直者の五感による見張りに勝るものはない」という警鐘を鳴らす事例として広く知られることとなりました。