「瓢箪から駒」は、正しくは「瓢箪から駒が出る」という慣用句が省略された形です。ここで言う「駒」とは将棋の駒ではなく、馬(特に子馬や名馬)を意味しています。中身が空洞とはいえ、手のひらや腰に下げる程度の小さな瓢箪から巨大な馬が現れるというのは、現実世界では物理的に絶対にあり得ない情景です。
この奇抜な発想のルーツは、古代中国の唐代に実在したとされる伝説的な仙人、張果老(ちょうかろう)の説話に遡ります。道教の代表的な八人の仙人「八仙」の一角を担う張果老は、1日に数万里を駆けることができる白いロバ(または名馬)を所有していました。
伝承によると、張果老は休息を取る際、乗っていた馬をまるで紙のように小さく折りたたんで腰の瓢箪の中に吸い込ませて収納し、再び移動する際には瓢箪に水を吹きかけて元の雄大な馬の姿へと戻したと伝えられています。この「狭い瓢箪の口から巨大な馬が飛び出す」という超現実的な神仙譚が日本に伝来し、室町時代から江戸時代にかけて庶民の間で「到底あり得ないことの例え」や「冗談が現実化する不思議」を表す言葉として定着しました。