日本で古くから親しまれている「食べた後すぐ横になると牛になる」という言葉のルーツは、行儀作法への戒めと農耕社会における生活の知恵にあります。食後すぐにゴロゴロする姿を怠け者と見なす道徳的な意味合いに加え、牛のように反芻(はんすう)動物ではない人間が食後すぐに本格的に寝入ってしまうと、消化不良を起こして体調を崩す経験則から生まれた表現です。
現代の生理学において、食べた後すぐ横になると太るという説の真偽は「安静にとどめるか、そのまま熟睡するか」によって結論が分かれます。単に体を横にしてリラックスするだけであれば、消費カロリーの低下幅は座っている状態と比べて極めてわずかです。むしろ食後に激しい運動をすると、消化器官へ集まるべき血液が骨格筋へ分散し、胃腸の働きが低下してしまいます。
一方で、食後すぐ寝る太る真相として警戒すべきなのは「完全な睡眠状態」へ移行することです。入眠すると胃腸の蠕動(ぜんどう)運動が大幅に抑制され、消化管ホルモンや基礎代謝の働きが低下します。さらに、摂取した糖質がエネルギーとして消費されず、インスリンの働きによって中性脂肪として体内に蓄積されやすくなります。「横になって体を休めること」と「眠りに落ちること」は、代謝の観点から明確に区別しなければなりません。