ネット上のQ&AサイトやSNSで頻繁に見かける「少し酸っぱいけれど、しっかりグラグラ沸騰させれば菌が死ぬから飲んでも平気」という説は、医学的・食品衛生学的に極めて危険な誤解です。
確かに加熱によって乳酸菌や大腸菌群などの一般的な細菌そのものは死滅します。しかし、食品腐敗の過程で増殖する黄色ブドウ球菌などが作り出す毒素(エンテロトキシン)や、耐熱性芽胞を形成するセレウス菌の一部は、100℃で30分以上煮沸しても毒素が分解されません。
つまり、加熱によって生きた菌を殺菌できたとしても、すでに牛乳の中に生成されてしまった毒素はそのまま体内に取り込まれることになり、激しい嘔吐、下痢、腹痛を伴う細菌性食中毒(毒素型食中毒)を引き起こす原因となります。
「熱を通せば安全」という理屈が通用するのは、あくまで鮮度に問題がない牛乳を料理に使う場合のみです。すでに異臭や変質が見られる傷んだ牛乳は、煮込もうが焼き固めようが危険な状態に変わりありません。
万が一、傷んだ牛乳を誤飲して激しい腹痛や下痢、嘔吐の症状が出た場合は、自己判断で下痢止め薬を服用せず(毒素の排出を妨げる恐れがあるため)、経口補水液などで水分を補給しながら速やかに医療機関を受診してください。