外装が凹み、エンジンが焼き付いた車両であっても、解体現場のプロフェッショナルから見れば「利益の塊」に他なりません。動かない車が高く売れる理由には、一般にはあまり知られていない3つの明確な経済的メカニズムが存在します。
第1の要因は、海外輸出パーツ需要と買取実績の爆発的な拡大です。中東、アフリカ、東南アジア諸国では、過酷な環境下でも耐えうる日本車の信頼性が極めて高く評価されています。日本国内では車検を通せないような年式の古いカローラやハイエースであっても、オルタネーター、足回り、トランスミッションなどの単体パーツとして取り出せば、現地で高額取引されます。円安基調が定着した為替環境も追い風となり、部品単位での輸出利益率は過去最高水準を維持しています。
第2の要因は、自動車リサイクル法に基づく資源価値の再評価です。乗用車1台にはおよそ1トン前後の鉄やアルミニウム、そしてマフラーの触媒部分に含まれる白金(プラチナ)やパラジウムといった貴金属が凝縮されています。世界的な原材料高騰に伴い、金属スクラップとしてのベース価値が高止まりしているため、車両としての機能を喪失していても純粋なマテリアル価値だけで数万円の底値が保証される計算です。
第3の要因は、修復技術の進化とオークション相場の再編です。国内では「全損」と判定された事故車買取査定の真相を取材すると、骨格(フレーム)にダメージが及んでいても、板金技術が高度化した新興国へそのまま輸出されるか、フレーム修正機で精密修復されてレンタカーや商用車として再稼働するルートが確立されています。このように「走らない=ゴミ」と断じるのは国内の一般ユーザーだけであり、市場全体では活発な取引対象として扱われています。