頭蓋骨の構造において、側頭部は頭部側面の中央エリア全域を指します。具体的には、額の生え際から耳の上を通り、耳の後ろにある乳様突起(骨のでっぱり)付近、そして頭頂部と後頭部に囲まれた扇形のゾーンです。 多くの人が混同しやすい側頭部とこめかみの違いですが、解剖学的に見ると「包含関係」にあります。こめかみ(学術的には側頭窩の前方部)は、目尻と耳の付け根のほぼ中間にあるわずかな窪みを指し、側頭部という大きな区分の中の前方下部に位置する局所パーツです。
側頭部の皮膚直下には、下顎を引き上げて食べ物を噛み砕く主要筋である側頭筋が扇状に広く張り巡らされています。奥歯を強く噛み締めたときに耳の上周辺がボコッと硬く盛り上がる部分こそが側頭筋の本体であり、この筋肉の広がりこそが側頭部の実質的な可動領域と一致します。
さらに深部には、大脳の主要な構成要素である側頭葉が収まっています。側頭葉の働きは多岐にわたり、聴覚情報の一次処理をはじめ、言葉の意味を理解する言語野、そして海馬と密接に連携した記憶の定着・想起という高次脳機能の中心的役割を担っています。つまり側頭部は、表面の筋肉疲労から脳深部の機能までが密接に重なり合う、極めて繊細な要所なのです。