ネット上のQ&AサイトやSNSで散見される「石鹸で髪を洗うとハゲる」という説ですが、石鹸の成分そのものが毛根を破壊して脱毛を引き起こす直接的なエビデンスはありません。むしろ合成界面活性剤や防腐剤などの添加物を極力排除したい層にとって、純度の高い石鹸は頭皮への残留リスクが低い優れた洗浄剤です。
それにもかかわらず「抜け毛が増えた」と感じる人が多い背景には、石鹸特有の化学的性質による一時的な物理トラブルが関係しています。一般的な弱酸性の頭皮や毛髪に対し、石鹸はpH9〜10程度の弱アルカリ性を示します。髪がアルカリ性に傾くと、表面を保護しているキューティクルが開き、毛髪同士が強く引っ掛かり合います。この状態で無理に指を通そうとしたり、強引にブラッシングを行ったりすることで、摩擦による切れ毛や牽引性の抜け毛が急増してしまうのです。
また、水道水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンと石鹸成分が結合すると、「脂肪酸カルシウム(いわゆる石鹸カス)」と呼ばれる不溶性物質が生成されます。これが毛髪表面や毛穴周辺に付着すると、強烈なごわつきや毛穴詰まりの原因となり、放置すれば炎症を招いて健康な発毛を阻害します。「ハゲる」という噂の正体は、石鹸そのものの毒性ではなく、アルカリ性の放置と石鹸カスのすすぎ残しによる二次被害に他なりません。