「骨が抜けたはずなのに、いつまでも異物感が消えない」「ししゃもを食べてから2週間も違和感がある」といった悩みは、耳鼻咽喉科の外来で日常茶飯事となっています。この不可解な症状の裏には、人体の防御反応と感覚神経の仕組みが深く関わっています。
最も多い喉の違和感が続く原因は、骨そのものはすでに嚥下運動や水流によって脱落して胃へ落ちているにもかかわらず、骨が刺さっていた部位に残された「傷(擦過傷や小潰瘍)」です。喉の粘膜は感覚神経が非常に密集しており、ほんのコンマ数ミリの擦り傷であっても、脳は「異物が刺さったまま存在している」と錯覚してしまいます。この傷の治癒には通常数日から1週間程度を要するため、骨が抜けていてもチクチクした異物感だけが取り残されるのです。
また、インターネット上には「お酢を飲めば酸で骨が柔らかくなって取れる」という俗説が散見されますが、これも医学的には完全な迷信です。口の中に含む数秒から数十秒程度の酢の酸度では、魚の骨のカルシウムを脱灰させることは不可能です。それどころか、骨が刺さって傷ついているデリケートな粘膜に強酸性の酢を流し込むことで、傷口が化学的に爛れ、炎症を著しく悪化させる自傷行為となりかねません。