十国峠が歩んできた変遷を辿ると、日本の観光地再生における教科書的なモデルケースが浮き彫りになります。1956年に開業した歴史ある十国鋼索線は、長年にわたり伊豆箱根鉄道が運営を担ってきました。しかし、インバウンド需要の多様化や昭和型ドライブインの陳腐化を受け、2026年12月に富士急行が事業譲受を発表。2026年2月から新体制がスタートし、同年8月に山頂エリアを全面刷新する形でパノラマテラス1059がグランドオープンを果たしました。
リニューアルの目玉となったのは、十国(伊豆・駿河・遠江・甲斐・信濃・武蔵・上総・下総・安房・相模)の旧国名を見渡せる360度大パノラマを、ソファや階段状デッキでゆったりとくつろぎながら鑑賞できる空間設計です。従来の「登って景色を眺めたらすぐ降りる」という通過型観光から、「空と山に包まれながら時間を過ごす」滞在型リゾートへのパラダイムシフトが成功要因といえます。さらにグランピング施設「THE GLAMPING 箱根十国峠」の併設など、富士急グループが得意とする空間ブランディングが見事に結実しています。