大洗出張編において、松重豊が演じる五郎が胃袋を満たしたグルメは二段階の構成となっていた。一つは港町ならではの素朴な名物甘味、そしてもう一つは黒潮と親潮が交わる鹿島灘の海の恵みを凝縮した海鮮料理である。
商談を終えた五郎がまず吸い寄せられたのが、大洗の地元住民に長年親しまれている「味の店 たかはし」のみつだんごだった。小麦粉の生地をふっくらと焼き上げ、特製の醤油みたらしタレを絡めてきな粉をたっぷりとまぶしたこの団子は、一般的な米粉の団子とは異なる独特のふわふわとした食感を誇る。五郎が店先で注文し、寒風の吹く港の空気を感じながら頬張ったシーンは、大洗という土地が持つ飾り気のない温もりを象徴していた。
そして物語のクライマックス、本格的な空腹に襲われた五郎が駆け込んだのが、大洗の魚介を余すところなく味わえる大洗町内の海鮮食事処である。太平洋に面したこの地ならではの新鮮な刺身、冬の風物詩であるアンコウ料理、肉厚なハマグリ、そして職人の手で絶妙に煮付けられた地魚の定食。松重豊が見せた、一口ごとに目を丸くし、無言で米をかきこむ圧倒的な咀嚼のリアリズムは、単なる旅番組の食レポとは一線を画す「個の歓喜」を見事に表現していた。放送当時、画面越しに漂う煮魚の湯気とタレの照りに刺激され、翌日の大洗へ車を走らせた視聴者が続出したのも頷ける完成度であった。