イモトが直面したエベレストのデスゾーン|登頂断念の真相と登山部の今

イモトが直面したエベレストのデスゾーン|登頂断念の真相と登山部の今

イモトが直面したエベレストのデスゾーン|登頂断念の真相と登山部の今の最新情報をご紹介します。専門的な知識が満載です。

登山界において標高8,000mを超える領域は、生きた人間が長期間滞在することが叶わない「デスゾーン(死の地帯)」と呼ばれます。エベレストの山頂は標高8,848mに達し、デスゾーンと呼ばれるエリアはサウスコル(標高約7,906m)の第4キャンプより上部に広がっています。この領域における気圧と酸素濃度は地上の約3分の1(約30〜33%)にまで低下します。どれほど優れた高所順応を施したトップクライマーであっても、酸素ボンベなしでは数分で意識障害を引き起こし、体内組織の壊死や肺水腫、脳浮腫を発症して死に至る危険を常に抱えています。

デスゾーンにおける最大の脅威は、人間の生存限界時間が最大でも48時間程度に限られている点です。酸素ボンベを吸入していても消費スピードは凄まじく、ひとたび天候が急変してブリザードに巻き込まれれば、自力での下山は絶望的となります。登山史のデータによると、エベレストにおける死亡事故の約7割以上が標高8,000m以上のデスゾーン周辺で発生しており、死因の多くは滑落、極度の疲労による行動不能、高山病の悪化、そして低体温症です。

さらに世間に衝撃を与え続けているのが、エベレスト腹筒に「200体以上の遺体がそのまま放置されている」という冷徹な実態です。標高8,000mを超える極寒の斜面では、自らの身体を支えて一歩前進することすら命懸けであり、体重70〜80kgに達する遺体を担いで下山させる作業には、1体につき6〜10名規模の熟練シェルパと数千万円単位の費用を要します。救助隊員自身がデスゾーンの犠牲者になるリスクが極めて高いため、やむを得ず「道標」として山肌に遺体が残されるケースが後を絶ちません。有名な「グリーンブーツ」と呼ばれる遺体のように、鮮やかな登山靴を履いたまま時を止めた登山者たちの痕跡は、デスゾーンが文字通り「死と隣り合わせの聖域」であることを物語っています。

清水 千尋
著者

清水 千尋

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。