トラウマをより広範囲かつ強烈に刷り込んだ要素として無視できないのが、劇場アニメ『はだしのゲン』の存在だ。アニメーション制作を手掛けたのは、屈指の表現力で知られるマッドハウス。彼らが生み出した映像作品は、カラーの色彩と臨場感あふれる音響によって、原作の衝撃を何倍にも増幅させた。
原竹の爆風で目が飛び出す瞬間や、爆心地近くで皮膚が泥のように溶けていく描写は、当時の子供たちに強烈なトラウマ体験を植え付けた。夏休みの登校日や地域の上映会で鑑賞させられた記憶は、何十年を経た今なお「鮮明な恐怖」として語り継がれている。映像表現の卓越性が、図らずも世代を超えた強烈な心理的インパクトを生み出す結果となった。