徳弘正也氏の真骨頂は、一見すると過激なギャグの裏に隠された卓越した画力と冷徹なまでのストーリーテリングにあります。
『週刊少年ジャンプ』で連載された『シェイプアップ乱』や『新ジャングルの王者ターちゃん♡』では、人体構造を完璧に把握した筋肉の陰影描写、スピーディーな格闘アクションが読者を圧倒しました。コミカルな下ネタ描写で笑わせつつ、命の尊厳や家族愛を訴えかけるドラマ性の高さは、少年誌の枠組みを大きく超えていました。
青年誌へ舞台を移して描かれたディストピアSF『狂四郎2030』では、人間の醜悪さと気高さを極限状況の中で描き出し、今なおカルト的な人気と高い芸術的評価を獲得しています。ギャグ作家としての瞬発力と、リアリズムを支える確かなデッサン力が融合したその画面構成は、後進の漫画家たちにも多大な衝撃を与えました。