SIMカードを取り出す作業に入る前、絶対に省略してはならない鉄則が「端末の電源を完全に切ること」です。画面が点灯したまま、あるいはスリープ状態のままトレイを引き抜く行為は、端末内部とSIMカードの双方に致命的なダメージを与える危険性があります。
なぜ電源を切らなければならないのか。通信端末の設計・修理関係者は次のように警鐘を鳴らします。
「SIMカードの金色の接触端子面には微弱な電流が流れています。通電状態のままトレイをスライドさせると、端子同士が意図しない部分で接触し、電気的ショート(短絡)を引き起こすリスクがあります。これが原因でSIMカードのICチップ自体が読み取り不能になったり、スマートフォンの通信制御基板が焼き付いて通信不能に陥ったりするトラブルが修理現場で報告されています」(独立系修理工房チーフエンジニア)
さらに、OSがSIMカードの通信プロファイルを読み書きしている最中に物理的な切断が発生すると、ソフトウェア側で通信エラーが固定化し、再起動しても電波を掴まなくなるシステム障害を招くケースもあります。必ず電源ボタンを長押しし、シャットダウンが完了して画面が完全に暗転したことを確認してから作業を開始してください。
あわせて、作業環境の整備も極めて重要です。SIMカードは米粒大の極小パーツ(特に現在の主流であるnano-SIMは縦12.3mm×横8.8mm)であり、作業中の落下による紛失が多発しています。毛足の長い絨毯の上や暗い場所を避け、白い布や清潔なハンドタオルを敷いた明るい机の上で作業を行うのが鉄則です。また、冬場や乾燥した部屋では静電気によるIC破壊を防ぐため、作業前に壁や金属製ドアノブに触れて身体の静電気を逃がしておきましょう。