写真集『神話少女〜栗山千明〜』は、1997年3月に新潮社より刊行されました。撮影を担当したのは、1991年に宮沢りえの写真集『Santa Fe』で150万部という前代未聞のメガヒットを記録し、日本の写真表現を塗り替えた写真家・篠山紀信。そして被写体となったのが、ファッション誌『ピチレモン』などでティーンモデルとして活動を開始していた、当時12歳の栗山千明でした。
同作は単なるアイドル写真集の枠組みを根底から覆す構成となっていました。少女が大人へと変貌する一瞬の揺らぎ、神秘的な静けさ、陶器のような肌と鋭い眼差し。篠山紀信の卓越したライティングと演出力により、少女の純潔性とエロティシズムの境界線を極限まで研ぎ澄ました一作として、文壇や美術関係者からも極めて高い評価を獲得しました。のちに映画『バトル・ロワイアル』やクエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル Vol.1』で世界的な脚光を浴びることになる彼女の「原点にして伝説のポートレート」として、出版史にその名を刻むことになります。
しかし、刊行からわずか数年後、この作品を取り巻く環境は激変します。表現の自由と児童保護を巡る法制度の厳格化、そして出版業界におけるコンプライアンス意識の劇的なパラダイムシフトによって、本作は「容易に再販・閲覧できない幻の書」へと変貌を遂げていくことになりました。