着物を正しく着こなすための第一歩は、それぞれの着物が持つ格(格式)の違いを理解することです。礼装としての序列を把握しておけば、招待されたイベントの趣旨に合わせた的確な判断が下せます。
留袖は、女性が着用する着物の中で最も格が高い「第一礼装(正礼装)」に分類されます。西洋のドレスコードで言えばイブニングドレスやローブデコルテに相当し、主に婚礼や格式ある公式晩餐会といった最高の慶事にのみ着用されます。これに対し、訪問着は留袖に次ぐ「準礼装」または「略礼装」の扱いとなります。訪問着は社交着としての性格を持ち合わせているため、結婚披露宴からパーティー、お茶会、学校行事まで幅広いシチュエーションに対応できる汎用性の高さが魅力です。
格の上下を決定づけるもう一つの重要な要素が、背中や両袖、両胸に入れられる「家紋の数(紋の数)」です。紋は数が多いほど格式が高くなり、五つ紋(背・両袖・両胸)、三つ紋(背・両袖)、一つ紋(背のみ)、そして紋のない「無紋」の順に格が下がります。
黒留袖には必ず最高格である五つ紋が入ります。一方、色留袖は紋の数によって格を調整できる柔軟性があり、五つ紋を入れれば黒留袖と同格の第一礼装に、三つ紋や一つ紋にすれば準礼装として扱われます。訪問着は紋を入れない「無紋」で仕立てられるのが一般的ですが、背中に一つ紋を入れることで準礼装としての格を高め、格調高い式典にも胸を張って出席できる仕様に昇格させることが可能です。