1992年のアニメ放送開始当初、みさえがしんのすけの悪ふざけに対して繰り出す「おしりペンペン」「げんこつ」「こめかみグリグリ」は、番組の様式美とも言える定番のお仕置きでした。しかし、2000年代中盤を境にこれらの描写は顕著に減少していきました。
最大の転換点となったのは、BPO(放送倫理・番組向上機構)に寄せられる視聴者意見と、テレビ朝日系列の放送コードの見直しです。PTA全国協議会が毎年実施していた「子どもに見せたくない番組」アンケートで、クレヨンしんちゃんは長年上位の常連となっていました。保護者層から「子どもの暴力や言葉遣いの悪化を助長する」「親が子どもに体罰を与えるシーンを真似する」といった懸念が継続的に寄せられた結果、局と制作会社シンエイ動画は段階的な演出の見直しを余儀なくされた経緯があります。
また、2006年頃から児童虐待防止法改正や体罰根絶に向けた社会意識の高まりが加速しました。アニメの表現であっても「頭部への打撃(げんこつ)」や「児童への身体的苦痛(おしりペンペン)」は、現代のコンプライアンス基準では不適切な暴力描写と受け取られかねません。こうした外部環境の変化に合わせ、作品の存続とクオリティ維持のために、物理的な折檻描写を自然な形で抑制していったのが真相です。