クリムトが最期に呼んだ女性エミリー・フローゲ『接吻』の真相と生涯

クリムトが最期に呼んだ女性エミリー・フローゲ『接吻』の真相と生涯

クリムトが最期に呼んだ女性エミリー・フローゲ『接吻』の真相と生涯の特集記事をお届けします。専門的な知識がチェックできます。

これほどまでに深く結ばれていた二人ですが、生涯にわたって婚姻関係を結ぶことはありませんでした。なぜ二人は結婚しなかったのか――この謎は、世紀末ウィーンの文化史における大きな関心事であり続けています。

当時のクリムトは、アトリエに出入りするモデルたちと幾度となく浮名を流し、私生児を10人以上もうけていたと噂されるほどの自由奔放な生活を送っていました。しかし、そうした刹那的な情事と、エミリーに対する愛情は明確に峻別されていました。クリムトにとってエミリーは、官能の対象を超越した「聖なる存在」であり、家庭生活という日常の制度に縛り付けることを互いに望まなかったと考えられています。

また、エミリー側の自立心も見逃せません。当時のオーストリア社会において、女性が結婚することは法的な従属やキャリアの放棄を意味することが一般的でした。自らの才能でビジネスを成功させていたエミリーにとって、独身を貫くことは表現者・実業家としての自由を守るための主体的な選択だったのです。恋人であり、親友であり、芸術の同志。二人は100年以上も前に、現代でいう「自立したパートナーシップ」の究極形を実践していました。

森 瞳
著者

森 瞳

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