漫画やドラマで世界的な人気を博した『深夜食堂』において、焼きおにぎりは夜更けに訪れる客の孤独を優しく包み込む象徴的なメニューとして描かれた。特別な高級食材など使わずとも、醤油の焦げる匂いと立ちのぼる湯気だけで、人の心を芯からほどいてしまう力。そこには日本料理の根底にある「素朴さの中の贅沢」が色濃く宿っている。
長寿番組『きょうの料理』でも、時代ごとに形を変えながら無数の焼きおにぎりが紹介されてきた。炭火でじっくり焼く伝統的な手法から、トースターや魚焼きグリルを活用する時短技、現代のフライパン調理に至るまで、メディアを通じて世代から世代へとその技術と愛情が受け継がれている。形や焼き具材は変われど、米を炙って香りを纏わせるという行為は、日本人のDNAに深く刻まれたソウルフードの原風景なのだ。