大分県民の記憶に深く刻まれている大分名物としての府内焼きの歴史は、昭和後期にまで遡ります。府内町の一角にあった軽食スタンドで誕生したこの焼き菓子は、回転焼き(今川焼き)に似た形状でありながら、中身はお好み焼き風の総菜仕立てという斬新なスタイルで一世を風靡しました。
部活帰りの高校生がお小遣いを握りしめて買い食いし、トキハ百貨店で買い物を楽しんだ家族連れが手土産として持ち帰るなど、府内町のグルメ焼き菓子として確固たる地位を築いていました。しかし、2000年代以降の店主の高齢化や後継者問題、中心市街地の再開発に伴い、惜しまれつつも暖簾を下ろすことになります。
「もう二度と食べられないのか」という喪失感は地元ファンの間で長く燻り続け、この空白期間が結果として府内焼きを「伝説のローカルフード」へと昇華させる要因となりました。