「宇宙の王たる者、標準語や厳粛な宇宙語を話すはず」という読者の先入観を木っ端微塵に砕いたのが、ニコちゃん大王の流暢な名古屋弁です。「〜だがね」「どえりゃあ」「おみゃあ」「〜みゃあ」といったコテコテの尾張言葉を連発する姿は、アニメ版が放送された1980年代初頭の日本列島に大きな衝撃を与えました。
この名古屋弁の真相には、鳥山明氏の出自が深く関わっています。愛知県清須市(旧西春日井郡清洲町)に生涯拠点を置き続けた鳥山氏にとって、名古屋弁は幼少期から慣れ親しんだ日常言語そのものでした。当時の担当編集者であった鳥嶋和彦氏との打ち合わせのなかで、「宇宙人が名古屋弁を喋ったら一番くだらなくて面白い」という着想が持ち上がり、即座に採用されたというエピソードが残されています。
ニコちゃん大王 モデル元ネタに関しては、特定の歴史上の独裁者や実在の軍人ではなく、「近所の口うるさいけれど憎めない頑固オヤジ」を戯画化したものとされています。全宇宙を支配せんとする壮大な野望と、ローカル色の強い方言による日常会話のミスマッチは、言語社会学の観点からも「権威の脱構築」を見事に成立させた稀有なプロットと言えます。