法規上は明確に区別されているものの、一般道の実態はドライバーにとって極めて紛らわしいトラップに満ちている。都内の幹線道路を日常的に運転する50代の男性会社員は、過去に経験した取り締まりの生々しい記憶をこう振り返る。
「朝8時過ぎ、次の交差点を左折する予定だったため、約150メートル手前で空いていたバス専用レーンへ車線変更しました。曲がる準備をしていただけなのに、交差点を曲がった先で手招きされ、白バイに止められたのです。警察官からは『左折のための進入としては距離が長すぎる。直進車線を回避してショートカットしたとみなされる』と告げられ、反則金6,000円の青切符を切られました。何メートル手前から入っていいのか現場では誰にも分かりません」
この告白が示すように、ドライバーと取り締まり側の間で最もトラブルになりやすいのが「左折準備のための適正な距離」である。道路交通法には「あらかじめ道路の左端に寄り」と書かれているのみで、具体的な数字(メートル数)は明文規定されていない。一般的には進路変更禁止区画(黄色い実線)の開始地点や、交差点手前30メートルから50メートル程度がひとつの目安とされるが、100メートル以上手前から専用レーンを巡航してしまうと、警察官の裁量によって「専用通行帯の違法走行」と判定される現実がある。
ソーシャルメディア上でも、「休日はバス専用レーンが解除されているのを知らずに右車線で大渋滞に巻き込まれていた」「原付に乗っていて、バス専用レーンを走っていたら後続の路線バスに執拗にクラクションを鳴らされた」といった困惑の声が溢れている。制度の趣旨が広く浸透していないことが、現場の摩擦を加速させている。