事故直後の混乱期、原子炉建屋の水素爆発や汚染水処理にあたった現場作業員たちの健康被害については、長年にわたり精密な検証が続けられてきた。国際放射線防護委員会(ICRP)や国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書は一貫して「急性放射線障害による死亡例は存在しない」と結論づけている。だが、それは現場の安全を意味していたわけではない。
厚生労働省はこれまでに、廃炉作業等に従事した後に白血病や肺がんなどを発症した元作業員に対し、被ばくによる労働災害(労災)を認定してきた。とりわけ、事故から数年後に肺がんで他界した元作業員の労災認定は、初期の混乱期における過酷な放射線暴露が時間差で命を脅かした実態を公に証明する結果となった。