人工ダイヤモンドの製造において、最も基礎となる原料は「炭素(カーボン)」です。鉛筆の芯(黒鉛・グラファイト)もダイヤモンドも同じ炭素の同素体ですが、原子の結合配列が異なります。黒鉛の層状構造を強固な正四面体の三次元立体格子へと組み替えること(炭素のダイヤモンド結晶化)が、製造技術の核心です。
現在、商業規模で稼働している合成ダイヤモンドの製造工程には、主に以下の2つのアプローチが存在します。
1. 地球深部を再現する「HPHT法(高温高圧法)」
HPHT(High Pressure High Temperature)法は、天然ダイヤモンドがマントル深部で生成される環境を人工的に再現する技術です。巨大な油圧プレス機を用い、約5万〜6万気圧、1,400〜1,600℃という超極限状態を作り出します。
装置のコア部分には、純粋な炭素源とともに微細な「種結晶(シードダイヤモンド)」、そして鉄やニッケル、コバルトなどの金属触媒が封入されます。超高温下で溶融した金属触媒の中に炭素が溶け込み、種結晶の表面へと析出しながら結晶成長を遂げます。主に工業用研磨剤や大粒のイエロー系・ブルー系宝石の製造に用いられてきた歴史があります。
2. プラズマで炭素を降り積もらせる「CVD法(化学気相蒸着法)」
現在、宝石用および高機能半導体ウェエハ向けとして急速にシェアを伸ばしているのがCVD(Chemical Vapor Deposition)法です。HPHT法のような極端な超高圧を必要とせず、低圧真空チャンバー内で結晶を成長させます。
真空容器内にメタンガス(CH₄)と水素ガス(H₂)を導入し、マイクロ波によってプラズマを発生させてガスを原子レベルに分解します。活性化した炭素ラジカルが基板(種結晶)の上に1層ずつ整然と堆積していくことで、極めて純度が高く無色透明な単結晶ダイヤモンドが成長します。1時間に数マイクロメートルから数十マイクロメートルというペースで、数週間かけて数カラットの原石へと育て上げられます。